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 判決ガイド

裁判とは

裁判とは、訴訟法上、裁判所または裁判官の訴訟行為のうち、法律行為的性質をもつものを意味します。意思表示的な訴訟行為のことです。

裁判は、判決・決定・命令に分類することができます。裁判の形式による分類です。判決(はんけつ)は、裁判所による裁判であり、特別の定めのある場合を除いては、口頭弁論に基づいてこれをしなければならないとされています。また必ず理由を付けなければなりません。決定(けってい)は、裁判所による裁判で、命令(めいれい)は裁判官による裁判です。

刑事事件の判決としてもっとも耳になじみがある「有罪」や「無罪」などの判決は、事件の中身に着目して実態を審理する、実体的裁判です。

一方、事件の内容に入っていく以前に、形式的な面から判断して手続きを打ち切る形式的裁判がなされる場合があります。事件が裁判所に係属したとしても、すべての事件について実体的裁判がなされるわけではないのです。実体的に審理されるには、実体的な審理に値するだけの訴訟条件(そしょうじょうけん)が備わっていなくてはなりません。そして、どの訴訟条件が不備であるかによって、管轄違いの裁判(かんかつちがいのさいばん)・公訴棄却(こうそききゃく)の決定・公訴棄却の判決・免訴(めんそ)の判決など、それぞれ法律で定められた方式で訴訟が打ち切られるのです。

管轄違いの裁判は、事件が本来属するべき裁判所に属していない場合になされます。適した裁判所でやるべきだからその裁判所では中身を判断できないという意味です。

公訴棄却の決定は、公訴が取り消されたときや被告人が死亡した時などになされます(刑事訴訟法339条)。

公訴棄却の判決は、被告に対して裁判権がないときや、公訴の提起があった事件についてさらに同一裁判所に公訴が提起されたとき(二重起訴)などになされます(刑事訴訟法338条)。

そして、免訴の判決は、確定判決を得た時や、犯罪後の法令により刑が廃止されたとき、時効が完成した時などに言い渡されます(刑事訴訟法337条)。

 

裁判員制度

従来は、刑事裁判は裁判所や裁判官のみによってなされていました。しかし、平成21年5月21日からスタートする裁判員制度によって、刑事事件は従来とは違った方法で裁判がなされる場合がでてくることになりました。

@ 裁判員制度とは

裁判員制度(さいばんいんせいど)とは、「国民のみなさんに裁判員として刑事裁判に参加してもらい、被告人が有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするかを裁判官と一緒に決めてもらう制度」です(裁判所ホームページより抜粋)。

国民が刑事裁判に参加すると、様々な分野で生活する、多種多様な意見を刑事裁判に取り入れることができるようになります。裁判官は、司法試験に合格し裁判官になって、長く裁判官を続けている人が多いですから、裁判官だけの意見よりも裁判員の意見を織り交ぜて裁判をしたほうが、より多角的に物事を判断できるのではないかと期待されています。

A 裁判員の選ばれ方

まず、各地方裁判所ごとに、管内の市町村の選挙管理委員会が無作為にくじで選んで作成した名簿に基づいて、翌年の裁判員候補者名簿を作成します。そして、通知や調査などを経て、裁判員就職禁止事項に該当している人などを名簿から外していきます。

その後、事件ごとに裁判員候補者名簿の中から、くじで裁判員候補者が選ばれ、質問票が送られます。裁判員候補者のうち、辞退を希望しない人や、送られてきた質問票の記載のみからでは辞退が認められなかった人が、選任手続の当日裁判所へ行くことになります。

また、最終的に事件ごとに6人の裁判員が選任されますが、補充裁判員なども選任されますから、ひとたび裁判員候補者名簿に載ったとしても、全員が実際に裁判員として活動するとは限らず、本当に裁判員として職務にあたるのは一部の人です。裁判員候補名簿に載ったからといって必ず裁判所に行かなくてはならないと考える必要はありません。

なお、裁判員は刑事裁判にかかわるのですから、裁判員候補者のプライバシーや生活の平穏を守ることは、裁判員制度を運用していく上で重要な要素となります。そのため、裁判員候補者に選ばれて名簿に載り、通知を受けたとしても、その旨公にすることは法律で禁止されています。公にするとは、裁判員候補者になったということを、不特定多数の人が知ることができる状態にすることです。たとえば、自分が裁判員候補名簿に載ったことをブログ等のインターネット上で公表することも、禁止された行為ということになります。

B 裁判員の仕事

裁判員の仕事は、公判に立ち会い、そして公判の内容について他の裁判員、裁判官とともに評議(ひょうぎ)することです。そして、裁判員制度の対象となっているのは、刑事裁判の中の一定の重大事件です。法廷で被告人、弁護人、検察官の意見を聞き、証拠を見聞きして事実を認定し、裁判官と一緒に被告人が有罪か無罪かを判断し、有罪の場合には刑の重さをも議論して、判決の内容を決めます。裁判員制度の対象となる一定の重大事件の代表的なものとしては、

  • 人を殺してしまった事件(殺人)
  • 強盗が人にけがをさせ、あるいは死亡させてしまった事件(強盗致死傷)
  • 人にけがをさせ死亡させてしまった事件(傷害致死)
  • 泥酔して自動車を運転し、人を死亡させてしまった事件(危険運転致死)
  • 人の住んでいる家に放火をした事件(現住建造物等放火)
  • 身の代金を取る目的で人を誘拐した事件(身の代金目的誘拐)
  • 子供に食事を与えないで放置したために死亡させてしまった事件(保護責任者遺棄致死)

などがあります。

評議の結果、全員の意見が一致しない場合には、裁判官と裁判員を合わせた多数決によって結論を出すことになります。なお、裁判員は裁判官と同じく一票を持ち、その意見の重みに違いはありません。ただし、その評決は、裁判官の1名以上および裁判員の1名以上が賛成する意見によらなければならず、被告人を有罪にする場合には、裁判官と裁判員のそれぞれ1人以上が有罪の意見であることが必要とされます。

判決の宣告は裁判長が行います。裁判員としての役割は判決の宣告がなされると終了と
なります。民事訴訟では、判決は判決書によって行われますが、刑事訴訟は、公判廷において口頭で宣告して行います。

なお、裁判員制度についてもっと詳しく知りたい方は、裁判所が運営している裁判員制度のホームページをご覧になることをおすすめします。裁判員制度についてわかりやすく図や絵を用いて説明がされています。

 

通常の裁判

事件の審理が一人の裁判官でなされている単独体(たんどくたい)の場合、判決の内容は、その裁判官の心証に基づいて決められます。事件の審理が複数の裁判官でなされている合議体(ごうぎたい)のときは、判決の内容は、その合議体を構成する各裁判官の話し合い、評議(ひょうぎ)によって決められます。この評議を一般に合議(ごうぎ)といいます。合議の結果、裁判官全員の意見が一致しないときは、多数決によって結論を出すことになります。

 

判決の内容

訴訟は原則として、有罪判決または無罪判決という裁判をもって終わります。有罪の判決には、刑の言い渡しの判決と刑の免除の判決とがあります。刑が免除されたとしても、有罪ではないことにはならないのです。

判決では、刑または刑の免除の主文(しゅぶん)と、理由(りゆう)が述べられます。判決の主文(しゅぶん)および理由を朗読し、または主文の朗読と同時に理由の要旨を告げなければならないとされています。

主文では、

  • 刑(有期刑は刑期を定める)
  • 執行猶予および保護観察(執行猶予期間を定める)
  • 罰金・過料につき労役場留置1日の換算額、仮納付
  • 没収、追徴
  • 未決拘留日数の本刑参入(実際に勾留した日数のうち刑期に参入する日数を定める)
  • 訴訟費用の負担

などを言い渡します。

理由としては、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を言い渡します。なお、法律上犯罪の成立を妨げる理由または刑の加重減免の理由となる事実が主張されたときは、これに対する判断も示さなければなりません。

罪となるべき事実とは、犯罪の特別構成要件に該当する具体的事実、責任条件の存在、処罰条件の存在などです。証拠の標目とは、証拠の同一性を示す表題・種目のことであるから、その表示方法としては、少なくともその事件の他の証拠と区別できる程度に特定して記載しなければならないとされています。

有罪判決は、被告事件について犯罪の証明があったときになされます。犯罪の証明は、すべて検察官が行うことになっています。検察官によって起訴された事実の存在が「合理的な疑いを容れない程度に証明」され、かつ、その事実が刑罰法令に触れるとき、有罪判決(ゆうざいはんけつ)が言い渡されるのです。合理的な疑いを入れない程度とは、普通に考えれば事実を確信できる程度という意味です。ですから、普通に考えて、事実があったかもしれないが、あったと断言することまではできないという、「あやしい」状態では、被告人に対して有罪判決を言い渡すことはできないのです。どんなに怪しくても、確信できるほどでなくては有罪にはできないのです。これを「疑わしきは被告人の利益に」の原則といいます。 別の側面から「無罪推定の原則」ということもできます。

これらの原則は、無実の罪で人が裁かれる冤罪のケースを防ぐためにも、刑事司法にかかわるすべての人が心にとどめておかなくてはならない大切な原則です。裁判員制度が始まると、裁判員はテレビなどのメディアを通して事件についての情報に先にふれてしまうことがあります。その場合、テレビがどんなに逮捕された者の悪い評判を放送していても、それを鵜呑みにせず、できる限り思いこみを持たずに裁判に臨むことが、裁判員には要求されるのです。

検察官によって起訴された事実が証拠調べを行っても証明できない場合、または、証拠調べによって証明された事実が刑罰法令に触れないときは、無罪判決(むざいはんけつ)が言い渡されます。

 

量刑の決め方

量刑(りょうけい)とは、被告人が有罪である場合に、裁判所が被告人に対して、法律で定められている処断刑の範囲内で、実際に被告人に科す刑罰の種類や程度を決めることをいいます。

実務においては、いわゆる量刑相場(りょうけいそうば)による量刑が行われています。量刑相場というのは、長年の刑事司法の実務において形成されてきた、同じような行為を内容とする事件に対して、同じような刑量の刑罰を適用するという、その量刑の相場のことです。量刑相場は法律などで定められているものではありません。量刑相場が形作られている理由としては、同様の事件に刑が科せられる場合、だいたい同じような量刑にすることが平等の観点からいっても妥当であろうという考えに基づいていると考えられます。

そもそも犯罪は、異なる時期に、異なる加害者が、異なる被害者に、異なる動機で行うのですから、一つとして全く同じ事件はありません。それぞれの事件に個性があり、似ている動機であっても、全く同じということはないのです。しかし、事件の状況や加害者の年齢や前科などの状況、動機、情状など、すべての側面から総合的に判断して、だいたい同じような事案ということができる場合はあります。そしてそのような場合には、だいたい同じような量刑を科せられることが多いのです。これが量刑相場です。文字通り「相場」ですから、時代によって社会情勢や世論の変化に伴い、量刑相場も変化していきます。

このように、量刑相場は、長年の経験がある裁判官、検察官、弁護士であれば、自然に身につけている職業上の勘のようなものです。ですから、量刑相場に実際上の事件が拘束されるというわけではありません。実際の量刑を定める際の一つの手がかりとなるべきものなのです。

実際の量刑は、量刑相場に加えて、量刑事情を考慮して、決められます。量刑事情とは、量刑を判断する際に考慮する事件の個性となることがらのことで、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 犯罪の動機・態様(悪質なら重い量刑のほうへ傾く)
  • 犯罪結果の程度(重大な犯罪結果なら重い量刑のほうへ傾く)
  • 被告人の性格(反社会性の大きさや、常習性など)
  • 被告人の前科・前歴の有無(反社会性の判断基準となる)
  • 余罪の有無(ある場合は重い量刑の方へ傾く)
  • 被害者の処罰感情
  • 被告人の反省の程度
  • 被害者に対して損害の賠償をしているか
  • 社会的制裁の有無(被告人が会社を解雇されるなどの社会生活上の不利益を既に受けているか)

なお、裁判員制度が導入された後の刑事司法においては、裁判員は事件の事実認定に加えて量刑判断も行います。裁判員が量刑を判断する際は、裁判官から不当な誘導を受けることがないように配慮がなされるため、量刑相場を用いずに量刑判断がなされる可能性があります。裁判員制度が導入される前の現段階では、具体的にどのように裁判員が量刑判断をしていくか、つまびらかにされていません。これまでに実施された裁判員による模擬裁判では、裁判官が裁判員に量刑相場を知らせずに、量刑の判断がなされています。

裁判員制度の導入により、量刑の判断の仕方もこれまでと大きく変化する可能性があります。

 

執行猶予

被告人が有罪の場合、判決では主文で刑を宣告されます。
(刑がどのようなものであるか、詳しくは刑罰の重さはこうして決まる参照)
その際、執行猶予が付せられる場合があります。

執行猶予の意義・目的
執行猶予とは、有罪判決において刑の言渡しがあったとき、情状により刑の執行を一定期間猶予する制度です。判例によると、執行猶予の目的は、犯罪の情状が比較的軽いなど、現実に刑を執行する必要性がそれほどは大きくないと認められるような犯人に対して、刑罰の執行及びいわゆる前科の及ぼす弊害をできるだけ避けるとともに、他面では、その取り消しを警告して善行保持を要請し、同時に希望を持たせることによって再犯防止の目的を達成しようとするものです。

つまり、一定の期間内に問題なく過ごすことができれば、刑罰を与えられないという特別な制度といえます。猶予期間内にさらに罪を犯して禁錮以上の刑になった場合等は、執行猶予が取り消されて刑が執行されます。被告人が執行猶予の期間中、罪を犯さず無事に過ごせば、たとえ判決において懲役刑の言渡しを受けていたとしても、刑罰権が消滅して、被告人は刑の執行を受けなくてすむことになります。

執行猶予の要件
執行猶予は誰にでも付せられるわけではありません。被告人の宣告刑が3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金でなければなりません(刑法25条)。このような主刑の制限があるのは、重大犯罪についてまで執行猶予を認めてしまうのは妥当ではないと考えられているからです。

さらに、前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者か、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日またはその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者でないと、初度の執行猶予の言渡しを受けることはできません。

また、執行猶予は、初度の場合は「情状により」、サイドの場合は「情状に特に酌量すべきものがあるとき」にすることができる、と定められていますから、情状があることも要件となります。考慮される事情としては、動機に酌むべきものがあること、犯罪により生じた実害が皆無ないし軽微であること、被害が弁償されていること、犯罪後の改悛の情が顕著であることなどです。

執行猶予付き判決を受けると・・・
執行猶予のついた判決は、刑務所に入らずもとの社会生活に戻れる点で一見無罪判決に似たようにも見えますが、あくまでも執行猶予付きの有罪判決であることに変わりはありません。そのため、被告人の前科となります。無罪判決と執行猶予付きの判決は、別のものなのです。

とはいえ、有罪判決に執行猶予がつくかつかないかで、被告人のその後は大きく変わります。判決言い渡しを受けた後、執行猶予がつかない判決を受けた被告人はそのまま収監されますが、執行猶予のついた判決を受けた被告人はそのまま身柄拘束を解かれ、普通に電車に乗るなどして帰宅することができます。

 

裁判の効力

裁判は、上訴ができないものの場合は、判決の場合は公判廷での宣告など告知により、確定します。上訴できるものの場合は、上訴する手段が尽きた時に、確定します。たとえば、上訴期間の経過、上訴権の放棄、上訴の取り下げ、上訴棄却の裁判の確定などです。

裁判が確定すると、例外的な場合を除き、通常の手段でその裁判の内容を争うことができなくなります。

また、実体判決及び免訴の判決が確定すると、公訴同一性のある事件について、再度公訴をすることができなくなります。これを一事不再理(いちじふさいり)といいます。また、広く既判力(きはんりょく)ともいいます。もし公訴が提起された場合は、免訴の判決が言い渡されます。憲法は、第39条後段において、「何人も同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない」と定めています。この規定が、確定した裁判に既判力を与える基本の根拠となっています。

参考文献:裁判所裁判員制度ホームページ 
量刑判断の実際〔増補版〕原田國男著 立花書房




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