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 起訴ガイド

起訴とは
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検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを起訴(きそ)または公訴の提起(こうそのていき)といいます。 つまり検察官が犯罪をしたと思われる人の処罰を求めて訴訟を起こすことを起訴と呼んでいます。起訴できるのは検察官のみです。これを「国家訴追主義(こっかそついしゅぎ)」「公訴独占主義(こうそどくせんしゅぎ)」といいます(刑事訴訟法247条)。

起訴される前は犯罪をしたと思われる人は被疑者として捜査されています。その後起訴されると、被疑者は被告人となって裁判に臨むことになります。

起訴便宜主義

検察官は、捜査の結果に基づいて、その事件を起訴するかどうかを決めます。検察官は、捜査の結果を通して被疑者が犯人であることを立証する十分な証拠がある場合でも、犯罪の重さや犯人の性格、犯人の年齢などを考慮して、あえて起訴する必要はないと考えるときは、起訴をしないことができます。これを「起訴便宜主義(きそべんぎしゅぎ)」といいます(「起訴裁量主義(きそさいりょうしゅぎ)」と呼ぶ人もいます)。

たとえば、少年による万引きなどの窃盗事件が起きたとします。少年が万引きしたことは防犯カメラの映像や本人の証言から明らかとなっていますが、少年が万引きしたものが10円のお菓子で、しかもその少年がとても反省していて両親からも強く叱責を受けており、もはや起訴をすることがかえって少年の更生にとって良いとは考えられないような場合には、検察官は起訴をしない、不起訴という選択をすることができるのです。

他の国には、犯人を有罪とできるような十分な証拠がある場合には必ず起訴をしなくてはならない「起訴法定主義(きそほうていしゅぎ)」をとっている国もあります。検察官のみが起訴をできる上、起訴するかしないかも検察官が決定することができるというところが、日本の刑事訴訟の大きな特徴であるといえます。起訴は、公正な刑事手続を維持するために重要であると考えられているから、検察官にこのような大きな地位を与えているのです。

付審判制度・検察審査会制度

この検察官の訴追の裁量の権限に対して、コントロールする制度もあります。付審判制度(ふしんぱんせいど)、検察審査会制度(けんさつしんさかいせいど)です。

付審判制度とは、準起訴手続(じゅんきそてつづき)とも呼ばれているもので、公務員の職権乱用の罪について、告訴人・告発人が検察官の不起訴処分に対して、事件を裁判所で取り上げるように求めることができる特別な制度です。これは、検察官が身内である公務員の不正に目をつぶって、あえて起訴しないようなことのないように、公正な立場の裁判所に判断を求めることができるようにしたものです。

次に、検察審査会制度とは、一般人からくじで選出された11名の検察審査員によって組織される検察審査会が、犯罪の容疑をかけられている者を裁判にかけなかったことについて、検察官のその判断のよしあしを審査する制度です。裁判員制度が始まる以前の日本の刑事司法にとっては、この制度が、一般人が刑事司法に参加する唯一のものでした。

検察審査会は被害者などからの申し立てがあった場合や、申し立てがなくても職権で事件をとりあげることができます。審査をした結果によって、不起訴としたことが正しい場合は「不起訴相当(ふきそそうとう)」、更に詳しく捜査すべきであって不起訴と決定したことはよくないとされた場合は「不起訴不当(ふきそふとう)」、起訴をするべきであるとされた場合は「起訴相当(きそそうとう)」となります。

「不起訴不当」と「起訴相当」の違いは検察審査会での検察審査員の投票数の違いです。不起訴がよくないという投票が11人中8人以上と多いと「起訴相当」という強い呼び方になるのです。「起訴相当」という議決があった場合には、検察官は、この議決を参考にして事件を再検討します。その結果、起訴をするのが相当であるとの結論に達したときは、起訴します。

従来は、検察審査会の議決が「起訴相当」となったとしても、検察官はそれを参考に再検討さえすればよく、その後に起訴を強制することはできませんでした。しかし平成16年に検察審査会法が改正されて、「起訴相当」の議決について検察官が再び不起訴処分をした場合、検察審査会は不起訴処分について再度の審査をして、「起訴議決(きそぎけつ)」という議決をすることができるようになりました。「起訴議決」がされると、裁判所がその事件について公訴の提起と公訴の維持に当たる人を弁護士の中から指定します。そして、指定を受けた弁護士は、起訴議決のあった事件について公訴を提起し、及びその公訴の維持をするために、検察官の職務を行います。弁護士が公訴を提起するという例外的なケースだといえます。起訴議決となるのは検察官が起訴すべきところなのに不起訴処分を何度も出しているような事案なのですから、もはや検察官にまかせると適正な職務執行が期待できない可能性があり、弁護士から検察官の代わりの者を指定する配慮をした、特別な事案といえるでしょう。

このように、起訴議決があった場合はやがて必ず起訴することになりますから、検察審査会の審査が法的に強制力を持った、すなわち法的拘束力を持ったということができます。この平成16年の改正により、検察官の訴追裁量に市民のコントロールを及ぼすという検察審査会制度は、より実効性を持つようになったといえます。

なお、検察審査会は非公開で行われ、一般人である検察審査委員が自由な雰囲気の中で活発に意見を交換して判断します。議決の方法は過半数です。検察審査員は一般市民から選ばれることは先にも述べましたが、検察審査員も裁判員と同様、日当が支給されます。

このように、起訴は、検察官が裁判所に対してする「この刑事事件を裁判にかける」とい意思表示であり、刑事事件のステージを裁判所に移すための重要なステップということがいえます。

起訴されるとどうなる?
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起訴の手続き

起訴は、検察官が裁判所に起訴状(きそじょう)という書面を提出して行います。起訴状には、被告人の氏名その他被告人を特定するような事項(氏名のほかには、たとえば被告人の年齢、職業、住居及び本籍など)と、公訴事実(こうそじじつ)、罪名(ざいめい)が記載されています。公訴事実とは、被告人がなしたと思われる犯罪を構成するような具体的な事実を、日時や場所、方法などで特定できるようにした検察官の主張のことです。これを読めば、誰がいつどこでどんなふうに何の犯罪をしたのかが特定できる形で分かるように、法律的に文章が構成されています。罪名とは、罰条(ばつじょう)といわれる、被告人の犯罪行為に該当するような法律条文を伴って表示される、罪の名前です。たとえば、「殺人(刑法199条)」などと表示します。

起訴状一本主義

検察官は起訴する際に、起訴状のほかには証拠などの資料をつけてはいけないことになっています。これを起訴状一本主義(きそじょういっぽんしゅぎ)といいます。この主義がとられている目的は、裁判官が裁判の前に証拠の資料を読んでしまい、「この被告人が犯罪をやったに決まっている」とあらかじめ判断して、決めつけの気持ちを持ったまま裁判に臨むことで真実に沿った正確な判断ができなくなってしまう事態を防ぐ目的です。真実は裁判の過程で明らかにするものであり、事前に他の書面を見て裁判官が決めてよいものではないからです。しかも、仮に提出が許されるとしたら証拠の書面は検察官によって提出されるのですから、被告人が真犯人であるとの気持ちを抱くように作られてしまい、ますます裁判官が被告人の有罪を決めつけるような気持ちをあらかじめ持ってしまう危険性があるのです。このような決めつけの気持ちを防ぐために(予断排除)、起訴状一本主義がとられています。

被疑者から被告人へ

公訴を提起すると、刑事事件の裁判手続が開始されることになります。今まで被疑者(ひぎしゃ)として扱われていた者は、起訴されることにより被告人(ひこくにん)となります。被告人は、刑事裁判の一方の当事者としての地位を持っています。無罪を主張する場合などは、弁護人とともに、検察官と法廷で正面から闘うことになります。起訴後は被告人として勾留されながら(あるいは、されない場合もあります)、弁護人と事件について詳しい話をしたり裁判における流れを練習したりして、来るべき法廷に備えます。

被告人に選任された弁護人は、時には長期にわたる裁判の間、法律の専門家としてはもちろん、被告人の理解者としてもサポートをし続けます。被告人と弁護人との間には、裁判を一緒に戦っていくための信頼関係が構築されます。

事物管轄

事件が起訴された場合、罰金以下の刑に当たる罪等の事件については簡易裁判所が、それ以外の罪の事件については地方裁判所が第一審裁判所、つまり最初の裁判所として事件を担当するのが原則です。例外としては、内乱等の罪の事件については高等裁判所が、児童福祉法違反等の少年の福祉を害する罪の事件については家庭裁判所が、それぞれ第一審裁判所となることが法律で決められています。 このような、事件の軽重による裁判所の分配を、事物管轄(じぶつかんかつ)といいます。

起訴されない場合
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検察官が事件を起訴することを起訴処分と呼び、反対に起訴しないことを不起訴処分とよびます。被疑者として逮捕されるなどして、取調べを受けた結果、起訴されなければその被疑者は不起訴処分になったということになります。

不起訴処分にはいろいろな理由があります。被疑者が本当の犯人かどうか分からない、あるいは犯罪行為をしたのかどうかが疑わしいなど、被疑者に対する犯罪自体が成立しないと思われる場合(「嫌疑不十分」や「嫌疑なし」など)もありますし、様々な事情を考慮した上で起訴するほどの重い罪ではないとしてあえて起訴しない場合もあります(この場合を起訴猶予(きそゆうよ)といいます)。起訴猶予は、不起訴処分の一種であるといえます。また、被疑者が犯罪行為の直後に自殺した場合など、被疑者死亡のまま書類送検(しょるいそうけん)※された事件なども、不起訴となります。被告人がいないと公判が成立しないからです。

また、起訴猶予などになっても、後に新証拠などがでて新たに起訴をするということもありえます。

不起訴になると、被疑者は裁判で裁かれることはありませんから、不起訴処分となれば前科はつきません。前科は刑事裁判で有罪判決を受けるとつくものですから、起訴されなければ、たとえ逮捕されていても、書類送検されていても、被疑者に前科がつくわけではありません。

書類送検とは・・・
書類送検(しょるいそうけん)とは、被疑者を逮捕しないで、または逮捕後釈放した後に、被疑者を拘束しないまま、事件を検察官に送致することをいいます。刑事法上の用語ではなくマスコミなどで用いられる一般的な用語です。原則として、軽微な事件以外については、警察官が犯罪の捜査をしたときは、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない(刑事訴訟法246条)と法律で定められていますから、このことを「送検」と呼び、身柄の拘束なしに書類のみを検察官に送致する場合を「書類送検」と区別して呼ばれています。

告訴や告発などのあった事件について起訴処分あるいは不起訴処分をしたときは、検察官は告訴人・告発人などに通知しなくてはなりません。公訴の取り消しをしたときや事件を他の検察庁の検察官に送致した時も同様です。また、不起訴処分をした場合は、告訴人・告発人などの請求があるときは、検察官は速やかにその理由を告げなくてはなりません。

犯罪の発生から起訴までの流れ
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ここで、犯罪の発生から起訴までの流れを復習しておきましょう。

↓
犯罪の発生              
 ↓
捜査機関の感知(捜査の端緒)
 ↓
捜査の実行
       →証拠収集
       →犯人の身柄確保
  ↓
検察官送致
  ↓
検察官事件受理
  ↓
捜査の実行
       →証拠収集
       →犯人の身柄確保
  ↓
検察官の事件処理 →起訴か不起訴か家庭裁判所送致

 

参考文献 刑事訴訟法講義案(三訂版)司法協会

 






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