業務上自分が占有している他人の物を横領した場合、業務上横領罪(刑法253条)に該当し、被害額や行為態様の悪質性等の事情により、10年以下の懲役に処せられるおそれがあります。財物の管理を委託され、管理している者にのみ業務上横領罪は成立します。会社の従業員であっても、会社から管理を委託される立場にはない者が会社の財物を持ち逃げしたような場合、横領罪ではなく窃盗罪となります。
業務上横領(被害額約1760万円) 藤田さん(仮名)は、町会長として町会の貯金や現金を管理する立場にあったが、24回にわたってそのお金(合計約1760万円)を着服した。藤田さんは着服したお金を遊びに使っており、また町会関係者に着服が発覚すると約2か月の間逃亡生活を送っている等、犯行後の事情も良いものではなかった。 もっとも、裁判の日、◎藤田さんが近親者の説得を受けて自ら警察へ出頭し、捜査段階から事実を認めて捜査に協力していること、◎反省と謝罪の言葉を述べていること、◎父親が合計510万円を町会に返還したこと、◎今後も父親が所有する農地の売却代金によりさらに被害弁償が行われる具体的な見込みがあること、◎前科前歴がない等、藤田さんに有利な事情も明らかになり、執行猶予を付けるか裁判官が判断する上で、考慮された。
懲役3年(保護観察付きの執行猶予5年)
業務上横領(被害額約1億1000万円)
近藤さん(仮名)は会社の代表取締役として、同社の経営全般を統括管理していた。近藤さんは、大学誘致に伴う学生マンション建設のためとして、他人から会社名義で借り入れたお金(合計約1億1000万円)を着服し、近藤さんが経営する他の会社の運転資金等にしてしまった。 もっとも、◎事実を認めて反省の態度を示していること、◎会社にお金を貸した者とは示談が成立していること、◎近藤さんは会社の代表取締役になってからは、経営改善のため私財を投じ、無報酬で尽力してきており、現在の代表者も、近藤さんのこれまでの功績を考慮すると著しい処罰感情を持つことはできないと述べていること、◎前科がないこと等、近藤さんに有利な事情も明らかになり、執行猶予を付けるか裁判官が判断する上で、考慮された。
有罪判決:懲役3年(執行猶予4年)
業務上横領(被害額約2500万円)
青木さん(仮名)は、ある任意団体の会長として、県から交付された補助金を管理する立場にあった。しかし、青木さんはその立場を利用して、任意団体の事業とは全く関係のない用途に補助金(合計約2500万円)を使い込んだ。 この犯行は、補助金を受けたわずか2日目に開始されたもので、青木さんはその後3か月ほどの間に補助金のほぼ全額を消費してしまった。 もっとも、裁判の日、◎任意団体の事業を実現できなかったのは、青木さんがあてにしていた、ある財団法人から融資が受けられなかったことも理由の1つであること、◎事実関係を認めて反省の態度を示していること、◎県に対し400万円を被害弁償していること、◎前科がないこと等、青木さんに有利な事情も明らかになり、裁判官が懲役期間を決定する上で考慮された。
有罪判決:懲役2年6月
業務上横領(被害額約110万円)
坂本さん(仮名)は、運送会社に勤務し、営業所長としてある営業所の業務を統括する立場にあった。しかし、青木さんはその立場を利用し、会社が購入して営業所に保管していたタイヤ50本(購入価格合計110万円)を、他人に50万円で売却し、その代金を着服した。なお、この犯行が計画的なものであったこと、坂本さんが常習的に着服を繰り返していたこと、犯行後に一切被害弁償がされていない等、坂本さんに不利な事情があった。
有罪判決:懲役1年2月
業務上横領(被害額97万円)
竹内さん(仮名)は、自分が居住しているマンションの住民が作る自治会において会計担当者として、同自治会の自治会費や共益費の管理を任されていた。しかし、竹内さんはその立場を利用して、5か月の間に11回、自治会費をや共益費(合計97万円)を着服した。 もっとも、裁判の日、◎事実を一貫して認めて反省を示し、弁護人を介して自治会長宛に謝罪文を送付していること、◎30年前の前科を除いては、一切前科がないことなど、竹内さんに有利な等、藤田さんに有利な事情も明らかになり、裁判官が懲役期間を決定する上で考慮された。
有罪判決:懲役1年4月