逮捕ってなに?

逮捕とは、罪を犯したと疑われる人(これを「被疑者(ひぎしゃ)」といいます)の身柄を拘束する強制処分のことをいいます。逮捕は、(1)現行犯逮捕、(2)通常逮捕、(3)緊急逮捕の三つに分けることができます。現行犯逮捕は逮捕状という令状を必要としませんが、通常逮捕と緊急逮捕は逮捕状によることが必要です。令状とは、強制処分を裁判所や捜査機関が行うことを許可する内容の書面のことです。すなわち逮捕状とは、逮捕を許可することを内容とする令状です。
(1)現行犯逮捕(げんこうはんたいほ)(刑訴法213条)
現行犯逮捕とは、現に罪を行い、または現に罪を行い終わった者を、逮捕することをいいます。現に罪を行い、または現に罪を行い終わった者のことを現行犯人(げんこうはんにん)といいます。つまり、現行犯人は罪を行っている最中の人か、目の前で罪を行い終えた人のことです。だれかを殴りつづけている人も、ナイフで一回刺し終えた人も、目の前で現にそれが行われたのであれば現行犯人です。
さらに、次のどれか一つに当たる者が、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときは、現行犯人とみなされます。
@犯人として追われているとき
A盗んだ品又は明らかに犯罪に用いたと思われる凶器その他の物を所有しているとき
B身体または被服に犯罪の明らかな跡があるとき
C呼び止めて問いただされたときに逃走しようとするとき
このみなされる現行犯人を準現行犯(じゅんげんこうはん)といいます。準現行犯の逮捕のことを、現行犯逮捕と区別して準現行犯逮捕ということもありますが、実質的にはどちらも現行犯逮捕ですので、変わりはありません。
どこまでが「罪を行い終わって間もない」のかどうかは、明確な基準が法律で定められているわけではありません。犯行後、時間的にまた犯行現場からの距離的にどこまで準現行犯逮捕として認められ、どこからが後述する緊急逮捕としなくてはならないのかという、現行犯の時間的場所的限界の問題があるのです。この問題に対しては、数多くの判例の積み重ねにより、一定の目安が作られてきています。限界事例とされている有名な判例(最決平成8年1月29日刑集50巻1号1頁)があります。暴力事件が発生し、犯人が逃走中であるとの無線連絡を受け警戒中の警察官が、犯行場所から約4キロはなれた場所で、犯行後約1時間後に犯人のうち一人を準現行犯逮捕し、同じく約4キロ離れた場所で1時間40分後に他の犯人を準現行犯逮捕したという事例です。この事例が罪を行い終わってから「間もない」といえるのかどうかが裁判の争点となりました。判例はこれに対し、どちらの準現行犯逮捕も、被疑者が罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるとして、逮捕を適法としました。このように、実務ではだいたい「間もない」といえるのは犯行後1、2時間程度であると考えられています。
現行犯逮捕は、誰でも逮捕状なしにすることができます。たとえば、あなたが道を歩いているとき男が女に暴行を加えているのを目撃したとします。その場合、男は「現に罪を行」っているといえますから、たまたま通りがかっただけのあなたもその男を逮捕することが法律上認められるのです。ただし、30万円以下の罰金、拘留または科料に当たるような、一定の軽い罪の場合は、犯人の住居もしくは氏名が明らかでないか、または犯人が逃亡する恐れがある場合でないと現行犯逮捕をすることができません。このような制限が設けられているのは、一定の軽微な犯罪では、特別な事情がない限り逮捕の必要性がなく、そういった犯罪に対してまで逮捕を広く認めることは、一般人の社会的な平穏を害することになると考えられているためです。また、警察官や検察官ではない私人が逮捕をしたときは、ただちに検察官や警察官に現行犯人を引き渡さなくてはならないと法律で定められています(刑訴法214条)。この決まりがあるのも、法律に詳しくない私人がむやみに長時間にわたって被逮捕者を監禁するなどして、新たな犯罪を成立させてしまうことがないよう、被疑者の人権に配慮しているためです。
現行犯逮捕があった場合は、逮捕の日時、場所、現行犯人と認めた理由及び事実の要旨、逮捕時の状況、証拠資料の有無などを記載した現行犯人逮捕手続書を作成します。警察官ではない一般の人が逮捕した場合には、現行犯人の引き渡しを受けた捜査官と逮捕した一般人が署名した現行犯人逮捕手続書を作成します。
現行犯逮捕が誰でも令状なしにできるとされているのは、現行犯は逮捕者の面前における犯罪だから、犯人を誤認して逮捕する危険性が少ないためです。つまり、現行犯逮捕されるときは常に、被疑者の嫌疑の程度が明白な場合であるということができます。また、面前で犯罪が行われているわけですから、すぐに犯人を逃がさないように逮捕する、緊急の必要があります。この点からも、令状を必要としなくて良いと考えられています。
(2)通常逮捕(つうじょうたいほ)
通常逮捕は、その名の通り、逮捕の中でもっともよくある普通の逮捕です。みなさんがテレビなどで見ることのある、張り込みをしていた刑事が、帰宅した被疑者をみつけて逮捕をするシーンでの逮捕は、たいていがこの通常逮捕です。
犯罪の捜査が進展し、被疑者を特定できる段階になると、捜査機関は被疑者の身柄を押さえる段階、つまり逮捕の段階に入ります。逮捕をするにはふたつの要件を満たす必要があります。@逮捕の理由とA逮捕の必要のふたつの要件です。逮捕の理由とは、被疑者が罪を犯したと認めるに足りる相当な理由のことです。被疑者が逮捕するに値する犯罪者であると認められるような理由がなければ逮捕することはできません。現行犯逮捕と異なり、被疑者が罪を犯したことが明白である必要はなく、相当な理由があればよいということになります。そして、逮捕の必要とは、逃亡または罪証隠滅のおそれのことです。逃亡するおそれがある場合は、被疑者を早く逮捕して身柄を押さえる必要があるといえるし、罪証隠滅のおそれがある場合は、証人に危害を加えて自らに不利益な証言をさせないように脅したり証拠書類を破棄したりするなど、証拠を使えなくするおそれがあるということですから、それらの罪証隠滅行為をさせないためにも、逮捕して身柄を押さえる必要があるといえます。これらの要件を満たしている事件について、逮捕をすることができます。
要件を満たした事件について、実際に逮捕をするには、逮捕状という令状が必要です。令状とは、強制の処分をすることについて裁判所が許可する旨、判断した裁判書きのことです。逮捕は被疑者の自由な意思に反してすることのできる強制処分ですから、逮捕をするには令状が必要となります。そこで、捜査機関はまず、裁判官に逮捕状の発布を求めることになります。逮捕状の請求はだれでもできるわけではありません。請求をすることができるのは、検察官または司法警察員(警察官の中で巡査部長以上の者)のみです。逮捕状の乱発を防ぐために、一定の幹部に限って逮捕状の請求をすることができるよう、このような制限が設けられています。そして逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕状請求書や資料を審査して、さらに必要がある場合は逮捕状請求者から陳述を聞いて、書類その他の者の提示を求め、逮捕状を発するかどうかを判断します。そして、逮捕の理由があれば、明らかに逮捕の必要がない場合を除き、逮捕状を発しなければなりません。明らかに逮捕の必要がない場合とは、「被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞(おそれ)がなく、かつ罪証を隠滅する虞がない等」(刑事訴訟規則143条の3)にあたる場合のことをいいます。この場合は、裁判官は、逮捕の理由があったとしても、逮捕状の請求を却下しなくてはなりません。
令状には、被疑者の氏名、疑われている罪の名前、引致すべき場所、有効期間などが記載されます。引致とは連れて行くという意味です。逮捕した被疑者をどの警察署に連れて行くかが記載されます。また、逮捕状の請求者の官公職氏名も記載されます。そして有効期間が切れた令状は裁判所に返還しなくてはなりません。
逮捕状の例
逮 捕 状(通常逮捕) |
被疑者 |
氏 名
年 齢
住 居
職 業 |
後夢 太郎
昭和60年1月1日生
刑事市事件町1丁目1番1号
無 職 |
罪 名 |
住居侵入,現住建造物等放火 |
被 疑 事 実 の 要 旨 |
別紙のとおり |
引 致 す べ き 場 所 |
東京都刑事北警察署又は逮捕地を管轄する警察署 |
有 効 期 間 |
平成21年1月8日まで |
有効期間経過後は,この令状により逮捕に着手することができない。この場合には,これを当裁判所に返還しなければならない。
有効期間内であっても,逮捕の必要がなくなったときは,直ちにこれを当裁判所に返還しなければならない。 |
上記の被疑事実により,被疑者を逮捕することを許可する。
平成21年1月1日
東 京 地 方 裁 判 所
裁 判 官 東 京 花 子 印 |
請求者の官公職氏名 東京都刑事北警察署 司法警察員 警部 永 田 町 一 郎 |
【この下には逮捕者の官公職氏名、逮捕や引致などの年月日や記名押印などが続きますが、省略】
捜査機関は、令状が発布された場合、逮捕状により被疑者を逮捕することができます。令状は裁判官が発するもので、強制力がありますから、逮捕状が発布された場合は、被疑者本人が嫌だといっても捜査機関は被疑者を強制的に逮捕することができるようになります。
(3)緊急逮捕(きんきゅうたいほ)(刑訴法210条)
緊急逮捕は、一定の重い犯罪について、逮捕状を求めることのできない急速を要する場合には、いったん令状がないまま逮捕し、逮捕の後に令状を請求するというものです。緊急逮捕をすることができるのは、検察官、検察事務官又は司法警察職員(警察官のこと)です。現行犯逮捕とは異なり、一般私人はすることができません。緊急逮捕は、被疑者を現行犯人ということはできないが、通常逮捕の手続きにのって逮捕状を裁判官に請求していたのでは被疑者を逃がしてしまうような緊急の場合に、特別に事前の令状発布を受けずに逮捕することを許した、令状主義の例外といえる逮捕です。ただし、現行犯逮捕が逮捕の後に令状を請求する必要がないのと比べて、緊急逮捕では逮捕の後に必ず裁判官の逮捕状を請求する手続きをしなくてはならないのですから、緊急逮捕が完全に令状主義の例外といえるわけではありません。また逮捕の事後にした逮捕状の請求に対して、裁判官が逮捕状を発しなかった場合は、逮捕者はただちに被疑者を釈放しなくてはなりません。
現行犯逮捕が、犯罪が現に行われているときに逮捕をするのに対して、緊急逮捕では、犯罪が行われてから時間が経っているのに急速に逮捕しなければならない特別な事情があるときに逮捕します。緊急逮捕の要件としては、犯罪から時間が経過していたとしても、被疑者の状態や証言などから犯罪の嫌疑があるといえる十分な理由があり、また犯罪は一定程度重罪で、しかも逮捕に急速を要する場合です。嫌疑の程度は、現行犯逮捕のように明白である必要はありませんが、通常逮捕のように相当な理由があるだけでは足りませんから、「十分な理由」が必要ということになります。
例えば、衣服に返り血のような染みがべっとりとついている状態で女が道をふらふらと歩いていたとします。そこへ自転車で通りかかった警ら中の警察官が、職務質問をし、それに対して女が「夫の頭を鈍器で殴って殺した」とつぶやいたとします。警察官は女が夫を殴るのを見ているわけではありませんから、女は現行犯人ではありません。よって女を現行犯逮捕することはできません。では通常逮捕できるかといえば、今、警察官の目の前に血で服を染めた女がいるわけですから、今すぐ女の身柄を確保しないと女が逃げてしまう可能性があり、とても通常逮捕の手続きを踏んでいる余裕はありません。
よって、なんとか令状がなくても、急速に逮捕する必要があるのです。このような場合には、殺人という重罪について、被疑者の衣服の様子や発言から犯罪の嫌疑があるといえる十分な理由があり、しかも逮捕に急速を要するといえますから、要件を満たしているといえ、警察官は女を緊急逮捕することができます。 |

逮捕された時点ではまだ被疑者であり犯人ではない。 |
逮捕されたらどうなる?

逮捕された被疑者はその後どうなるのか、見てみることにしましょう。すでに述べたとおり、逮捕には3種類あり、また逮捕を行う者も一般私人である場合や、検察事務官である場合がありますが、一般的には警察官による通常逮捕が多くありますので、ここでは司法巡査(普通の警察官)による通常逮捕を例にとって手続きを見てみましょう。逮捕の種類や逮捕者によって違いがでてくる場合については、後述します。
(1)通常逮捕後の手続き
@引致
引致とは、連れて行くことです。司法巡査(普通の警察官)が逮捕をした場合は、被疑者をただちに司法警察員(幹部の警察官)に引致しなくてはなりません。検察事務官が逮捕した場合は、検察官に引致しなくてはなりません。通常逮捕の場合、逮捕状に引致すべき場所として警察所が指定されていますから、原則として逮捕された被疑者はただちに警察署に連れて行かれることになります。
A弁解を聞く手続きと被疑者の権利の告知
司法警察員が引致された被疑者を受け取った場合、または司法警察員が自ら被疑者を逮捕したときは、ただちに被疑者に犯罪事実の要旨及び弁護人選任権を告げ、弁解の機会を与えます。弁解の機会とは、被疑事実について何か言い分があったら司法警察員に述べる機会を与えるということです。弁解がもしあれば、弁解録取書に記載されます。司法警察員は被疑者の弁解を聞くことで、その後の身柄拘束を継続するかどうか判断します。身柄を拘束しておく必要がないと判断した場合には、被疑者は釈放されます。
その後、弁護人選任権の告知や供述拒否権の告知が行われます。弁護人選任権として被疑者は、希望する場合は弁護人を選任することができ、選任しようとするときには裁判所または監獄の長もしくはその代理者に弁護士または弁護士会を指定した弁護人の選任を申し出ることができます。もちろん、被疑者に既に弁護人が付いているときは弁護人選任権の告知は行われません。供述拒否権は、自己に利益不利益を問わず、供述をすることを強制されないという被疑者の権利です。
B 警察官による取調べ、検察官送致
被疑者の身柄を拘束する必要があると判断した場合には、被疑者を留置して、被疑者や関係者の取調べ、実況見分などの捜査を行います。留置には時間制限があります。被疑者が身体を拘束されたとき、つまり逮捕されたときから48時間以内に、書類及び証拠物とともに被疑者を検察官に送致する(送検する)手続きをしなければなりません(刑事訴訟法203条第1項)。原則として逮捕時から48時間以内に、被疑者を釈放するか、事件を被疑者の身柄付きで検察官に送るか、判断して、検察官に送る場合は送致の手続きをとるのです。このような時間制限が設けられている趣旨は、不当に身柄拘束を長くして被疑者の人権を侵害することのないようにするためでもあるし、長い取調べに疲れた被疑者が、早く帰りたい一心で真実に反する自白をしてしまうなどして、結局、真実を発見できなくなることを防ぐためでもあります。取調べにあたる警察官は、被疑者からなんとか自白を引き出そうと取り調べをしますが、真実をねじ曲げてまで自白を引き出すことになっては、国家の秩序を担っている警察の役割と照らして本末転倒になってしまいます。
つまり、逮捕されたときから48時間の間は、被疑者は身柄の拘束を受け、取調べを受ける立場にあります。もちろん取調べが48時間続くのではなく、食事や睡眠の時間がきちんと確保されたうえで、取調べがなされます。
C検察官による取調べ
検察官は、警察官から書類及び証拠物とともに被疑者の送致を受けると、ただちに被疑者の取り調べをします。警察の持ち時間は48時間でしたが、検察官の持ち時間は24時間です。検察官は身柄を受け取ってから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内に勾留請求をしない限り、被疑者を釈放しなければなりません。 警察での取調べ時間が48時間以内で、検察官での取調べ時間が24時間以内であれば、合計で逮捕時から72時間以内になると思われるかもしれませんが、実際は警察から検察官への送致の手続きに待ち時間があったり、被疑者の身柄の移動時間があったりするため、全体として逮捕時から72時間をオーバーしてしまうこともあり得ます。そのため刑事訴訟法は、検察官の固有の持ち時間のほかに、さらに逮捕時から経過した時間を全体として通算した制限時間を設けることで、不当に長い被疑者の身柄拘束がなされないように配慮しているのです。
D取調べを受ける際のポイント
このように、逮捕されると被疑者は警察官や検察官からの取調べを受けます。法的な手続きの説明としては少し脱線しますが、これらの取調べに対する心構えは刑事事件の最初の段階において極めて重要なので、ここでアトム法律事務所<東京・大阪>から、取調べを受ける際のアドバイスをお話ししたいと思います。
警察官や検察官は、あなたを犯人だと疑って逮捕しているのですから、あなたに対する取調べを行い、厳しい追及が行われることが珍しくありません。というより、厳しく追及されるのが普通です。なぜなら、海千山千の犯罪者は疑われている自分の犯行を簡単に認める人ばかりではありませんから、警察官や検察官はなんとかして、犯行について一番詳しいはずの犯人本人の口から、犯罪の証拠となるような事実を聞いて、被疑者が犯人であることを裏付け、犯人に法の裁きを受けさせようと考えるのです。そのために様々な口調で被疑者の口を割らせようとします。
取調べにあたる捜査機関の最大の目的は、あなたが言ったことを「供述調書」という書面に記録して、後の裁判における有罪のため証拠として確保することにあります。
警察や検察官は、犯罪があれば厳しく取締り、犯罪のない社会を作ることを職務としていますから、本来は取調べを熱心にして有罪の証拠集めをすることは当然のことです。しかし、この捜査機関の熱心さは、時に全く犯人ではない被疑者を犯人にしたてあげてしまうことがあります。熱心すぎるあまりに、被疑者が不実の自白をするなどして、捜査の結果が真実から遠のいてしまうのです。このような熱心さは完全に違法であり、断じて許されるべきではありません。
そして、さらに残念なことに、いったんこのような事態に陥ってしまうと、被疑者がぬけだすことは大変困難です。そのため、取調べを受けるにあたってはあらかじめ、やっていない罪をかぶされることのないように、最大限の注意を払い、不実の罪は決して認めず、知らないことは知らないというという強い意思が必要になってくるのです。本来ならば、普通に取調べを受けていれば真実に沿った供述調書ができあがるのが理想ですが、悲しいことに、現実はそうならないことも多いのです。
警察官や検察官の取調べに対して、逮捕された者がいい加減な対応や、真実に反する自白などをすると、本当は無実であるのに処罰され、また犯罪行為をしていたとしても実際に犯した行為よりさらに悪質な行為・態様であったと認識され手、不相当な重い非難、処罰を受けることにもなりかねません。
ここで注意しなくてはならないのは、一度真実に反して作成された調書は、後から被疑者が証言を翻したとしても、ほとんど覆らないという点です。逮捕直後から一貫してどの調書を見ても無実を訴えている被疑者と、自白をした後に無実の訴えに転じた被疑者とでは、同じ無実の訴えでも、それぞれ信憑性が変わってきてしまうことが分かると思います。「やってもいないのにウソの自白をするはずがない」と判断され、後からの無実の訴えこそ嘘ではないかと疑われてしまうのです。
ですから、「間違った調書になってしまったとしても、後で裁判になったときに裁判官に本当のことを言えばいい。裁判官はわかってくれる」とか「真実と異なる調書をつくっても本当は違うのだから、裁判で明らかにできる」という考えは、持つべきではありません。初めから、一貫して真実を貫き通すことが重要です。
さらに詳しい取調べの心がまえについて知りたい方は、捜査ガイドを参照することをおすすめいたします。
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取調室ってどんな部屋?
取調べ室には、通常、真ん中に机が置かれ、その机を中心に対面して座れるよう、いくつかのイスが置かれています。取調べは、捜査官と被疑者の真剣勝負の場です。机の上には一切無駄なものが置かれておらず、調書を作るためのパソコンだけが置かれています。もっとも、捜査官の許しがあれば、取調べ室内でタバコを吸うことも可能で、取調べの休憩時には、捜査官と被疑者がタバコを吸いながら談笑することもあると言います。なお、検察庁での取調べは、検事の個室で行われ、検察官と検察事務官が立ち会い、警察署とは異なった雰囲気の中で進められます。 |
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(2)警察官による通常逮捕とは異なる手続きの場合
@引致
私人が現行犯人を逮捕した場合は、すぐに司法警察職員または検察官に引き渡さなければなりません(刑訴法214条)。司法巡査が私人から現行犯人を引き渡された場合は、司法巡査は現行犯人を司法警察員に引致します。これ以降の手続きは上記(1)の場合と同様です。
また、検察事務官が通常逮捕・緊急逮捕した場合は、ただちに被疑者を検察官に引致します(202条)。
A弁解を聞く手続きと被疑者の権利の告知
検察官自身が被疑者を逮捕した場合や検察事務官からの引致を受けた場合など、司法警察員からの送致を受けたのではない場合は、検察官が被疑事実の要旨及び弁護人の告知、弁解の録取、弁護人選任権 および供述拒否権を行います。被疑者がだれに逮捕されたとしても、誰かからは必ず権利の告知をされるように法律で定められているのです。
実務では、刑事訴訟法の定め以上に厳格に権利の告知がなされています。被疑者が司法警察員からあらかじめ被疑事実の要旨、弁護人選任権および供述拒否権の告知を受けていたとしても、検察官は送致を受けた後、再度被疑者に対して、同様の告知を行います。
B検察官による取調べ、勾留請求
検察官が自分で被疑者を逮捕した場合や、検察事務官から被疑者の引致を受けた場合は、検察官が取調べを行います。司法警察員が被疑者を逮捕した場合は、検察官に送致するまでに逮捕した時から48時間以内という時間制限がありましたが、検察官が逮捕した場合には、原則として、逮捕時から48時間以内に勾留請求をしない限り、被疑者を釈放しなければなりません。前述したように、警察官による逮捕の場合は、検察官は身柄を受け取ってから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内に勾留請求をしない限り被疑者を釈放しなければならなかったのですから、検察官が逮捕をした場合は、警察官の段階を経ない分だけ、逮捕から勾留請求までの制限時間が短縮されるのです。これは、検察官が必要以上の時間をかけて勾留請求の判断をすることがないようにする趣旨です。
つまり、整理すると、逮捕による身柄拘束の時間は、警察官が逮捕した場合は最大72時間、検察官が逮捕した場合は最大48時間ということになります。そして、検察官の勾留請求に対する裁判官の勾留決定があった場合には、さらに身柄拘束が続く「勾留」の段階に入ります。
ここまでが、逮捕されてから勾留請求にいたるまでの手続きの流れです。次のページからは、勾留請求を受けて勾留決定がなされ、起訴されるまでの流れを詳しくご説明します。 |